今朝、書店で文庫本を買った電車内での帰り道、ふと思ったことがあった。バッグに本を入れるとき、自分はどうやら背表紙を上にして入れているようである。
買った本はできるだけ綺麗な状態を保ちたい。それで最近グラシン紙の存在を知って、買った本を包んだりしてもいる。これは持ち帰った後の話だが、この「綺麗な状態を保つ」という目標には、書店で買った後の「帰り道」も含まれる。
本をバッグに入れるとき、まず浮かぶ選択肢は2つである。
・縦向き(読むときの向き)に入れる
・横向きに入れる
このどっちかである。バッグインバッグなどの本をある程度綺麗に保てる確証が持てる入れものがあるときは、正直どっちでもいい。ただぼくの場合、バッグインバッグは持っているが、それは大体ペン、ノート、その日に読みたい本でスペースが埋まっており、新たに買った本がそこに入る余地は残されていない場合が多い。今日もそうであった。
そうなると、本がいい感じにおさまりそうなバッグのポケットに入れることになる。そのとき、さっきの2つの選択(縦向き、横向き)に迫られる。そしてぼくはほとんどの場合、横向きを選ぶ。縦向きを選ぶと、バッグの中で本がパカパカ開く遊びスペースが生まれて、ページが折れちゃうんじゃないか、と思うからである。もちろん、これは入れようとするポケットの形状やほかの物との密度も関係してくる。たまたま本1冊分のスペースがきっちり空いていたら、本はしっかりバッグ内で固定され、遊びスペースは生まれない。でもそんなことって、あんまりないのだ。
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さて、縦向きか、横向きか、という話ではぼくは「横向き」ということになった。そこでさらに2つの選択に迫られることになる。
・背表紙を上にして入れる
・背表紙を下にして入れる
この話が冒頭で書いた「ふと思った」ことに含まれるのだけど、ぼくはだいたい背表紙を「上」にして入れるのである。でも、なんでそうするのかあんまり考えたことがなかった。それで、「いや背表紙を下にしたほうがいいのではないのか」と、ふと思ったのである。背表紙は上じゃなくて、下に向けたほうが安全なんじゃないか。
どういうことか。ぼくの心理としては、背表紙を「上」にしたほうが表紙という頑丈な部分が守っているように見えて安心なのかもしれない。でも考えてみると、背表紙を「上」にすることはページ面がバッグの生地に常に接触することになり、これは歩けば歩くほど、バッグの中で無防備なページとバッグの生地が擦れ合うことになる。これだと、本に微量のダメージを与え続けることになってしまう。
一方で、背表紙を「下」にして本を入れると、見た目としてはページ面があらわになって無防備感があるが、バッグの生地と接触しているのは丈夫な表紙だから、ダメージはあまり生じないのではないか、と思いはじめた。
いままでずっと本をバッグに入れるとき、背表紙を「上」にしていたのだけど、実際は「綺麗な状態を保つ」という目標においては、背表紙を「下」にしたほうがいいのではないか。そういうふとした気づきである。
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でも、ここで「なぜ自分は背表紙を上にして入れるのか」ということについてもうちょっと踏み込んで考えてみると、そこには「ページ面があらわになって無防備である」という心理的な不安がありそうである。もっといえば、ぼくはたぶん「たまたまバッグを開けたときに、上から鳥のフンが落ちてきたり、ドリンクをこぼしてしまったとき、無防備なページ全部が大きなダメージを受けるのではないか」という心配性をかかえていることに気づいた。
どうやら、おそらくほとんど現実にならないであろう出来事という”万が一”に備えて、背表紙を「上」にすることでガードしたいようである。その万が一はおそらく起こらないであろうが、起こる可能性はゼロとはいえない。万が一の大きなダメージよりも、その場で起こる微量なダメージを選択しているようである。
というふうに理屈を並べて、あたかも「背表紙を下にして入れるのが合理的」みたいな内容になったが、これは結局は「安全」と「安心」の違いなのだろう。背表紙を上にするとページ面が表紙でガードされ守られてる感がでて「安心」である。背表紙を下にするとページ面があらわになってしまい、万が一を想定して不安にはなるが、バッグの生地と接触するのは丈夫な表紙だから「安全」である。
とりあえずは、理屈の上では背表紙を「下」にのほうが「綺麗な状態を保つ」には合理的な選択だと思ったのではあるけど、ぼくには感情がある。これからは「背表紙を下にしたほうがいい」という選択肢を抱えながらも、背表紙を「上」にして入れるという選択肢をつい選んでしまうんだろうなと思う。安全は理屈、安心は心理。
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「本をバッグにどう入れるか」という話で1800文字も書いてしまった。単なる考えすぎか、追加のバッグインバッグの必要性か。
※サムネはUnsplashより
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