久しぶりに本屋にいき、３冊の本を買い、『パーティーが終わって、中年が始まる』を家で読み始め、公園で読み終え、帰宅して書いている。（残りの２冊は『センスの哲学』『動きすぎてはいけない』）
普通、平穏、日常、ルーティン。そんな言葉にどんどん近づいていっている自分がいる。今までの自分は普通じゃなかった、なんてことを言いたいのでは全くない。というよりも、世の中で「普通だよね」と言われているようなことに「そうだよね」と感じれるようになっている自分がいるような気がする。
その「普通」というのは、特に大きな物事ではなかったりする。乾いた洗濯物をすぐに部屋にしまう、とか。まあそういう些細なことだ。今までも「やらないと」とやってきたことだし、まじめな性格だし、そうなのだけど、「こういうのがいいよね」という感情が重なってきている感じがするのだ。
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最近パステル画をはじめた。もともと気にはなっていたのだが、ある日とあるプロの漫画家がトークしていている動画をみて、「パステル画、やるか」となぜか行動への沸点に達し、そのまま勢いでアマゾンで画材と用紙とフィキサチーフ（顔料の定着剤）を買った。合計で５千円ほどだった。
もうひとつの影響としては、坂口恭平さんだ。坂口さんは普段の日常の風景を描いていて、それがほんとうに美しい。日常に美しさを見出しているような。美しいものを見たから描くというよりも、普段見過ごしているものの美しさを見出しているような、そんなふうにおれは勝手に解釈した。
「パステル画」「soft pastel」と国内外のコンテンツを検索しても、坂口さんのようなテーマで描いている人はあまり見つからなかった。たぶん、坂口さんがパステル画をやっていなかったら、おれははじめていなかっただろうと思う。
用紙にちょいと色を塗って、指でこする。ごしごし擦る。色を伸ばす。指がよごれる。適度にティッシュで拭く。身体をつかって、直感的に描いているみたいで、なんだか野生感のある描き方でいい。30分もあればなんとなく描ける手軽さもいい。
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普段の生活も、パステル画で描きたいものでも、なんだか「普通」「日常」に寄っているような気がする。なにかしらの個人プロジェクトをやっていて「成功するぞー」という野心はまだ残っているが、一方で「変わらない日常」も好きだ。野心的に日常を過ごす、という温度感なのだろうか。
スーパーでバナナを買うときに５つついているやつを探して買う。安売りコーナーで山芋を探す。米よりパスタのほうが安いから、一汁一菜をやめて、パスタもたまに食べる。たまに掃除機をかける。布団のシーツを洗う。シェフ（部屋の観葉植物）に葉水をして、出かける前にカーテンを少しあけて日光が入るようにして、扇風機もリズム風でつけておく。そんな日常が大切に思えるように、ちょっとなってきた。
思うに、こうした「日常」のように見えるようなことが、いまのおれにとって「非日常」なのかもしれない。どれもこれもそう感じるわけではないけど、大多数の人が「普通だね」というようなことに「そうだよね」とちょっと感情を乗せて言えるようになっている気がする。
そもそも普通ってなんだ、という話もあるとは思うけど、少なくとも「普通」という言葉の正面に立って話しかけることができるくらいにはなってきている気がする。
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普通と日常のふたつの言葉をちゃんと噛み砕かないまま、ごっちゃで書いてしまった。
「うーぬ」と一旦下書きにして、10分ほど考えてみたのだけど、たぶんおれは「常にあるものごと」を大事にしようと思いはじめているのだと思う。「普通」の定義は、ひとそれぞれだし「これが普通だ」なんてことは言えない。それぞれの「普通」があるのだろうし、それを他者に押し付けることはできない。
たぶん、おれの中での「普通」が変わってきていて、新しいものだったり頂上を目指したい野心だったり、そういう感覚を残しながらも、毎日同じようなことが起こること（日常）に平穏を感じて、それを続けるための努力をしたいとも思っているのかもしれない。コンテンツにしようとしたら、なんら露出が期待できないようなものに惹かれているのだろうか。
鴨長明の『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず〜』でいうならば、一見変わっていないように見えて（日常）、中身は絶えず変わっているのだろうし、長田弘の詩でいう「かけがえのないものは、ありふれているものである」というような感じもある気がする。
十分に言語化されていない中での散文となった。まあ、毎回こんな感じだ。半熟出し。
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