『アーミー・オブ・シーブス』というネトフリ制作の映画がある。ネタバレする気もなければ映画のレビューをするつもりもないのだけど、この映画で「そうそう、数字って多けりゃいいってもんじゃないよな」と改めて感じるシーンがある。
あ、ちょいとあらすじっぽい紹介にもなっちゃうんだけど、主人公は会社員として働いている設定で、それなりに仕事にも不満を感じている平凡な男性という感じ。ただ、彼は「鍵師」でもあり、幼い頃から金庫の鍵を開けることに夢中であった。
そんな彼は、尊敬する鍵師のバックストーリーや、それに対する熱意をYoutubeにアップしている。動画の最後にちゃっかり「いいねとチャンネル登録もお願いしますね!」と言っているところも親近感があり、なんかほんと「趣味でYoutubeをやっている会社員」という印象を受ける。
そんである日、動画の視聴回数が「1」になり、彼は驚く。しかもコメントつき。「いやいや、視聴回数ゼロだったんかい」と思ったかもしれないが、そうである。それが「1」になったときの彼の喜びといったら。
もしこれが映画の世界でなかったら、想像できる未来の話は、これが5、10、50、100と増えていく、みたいな感じ。登録者100人!ついに1000人!まさかの1万人!奇跡の10万人!夢の100万人!ふんぞりかえる1000万人!地球もひっくりかえる1億人!みたいなロードマップだろうか。
でも、この映画ではそうはならない。
鍵師の腕を見込まれた主人公は、強盗のメンバーに招待される。内容はさておき(まぁ映画ですしね)、たった1の再生がとんでもない出会いを生んだ。
いまの話は抜きにして、僕はこの映画が好きで2回観ているのだけど、ふと考えてみると、なかなか印象的なシーンがあるじゃあないか、と思い、書いてみた。
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数年前、まだYoutubeの登録者が100人も満たない頃、その数値が10、20、30と増えていくごとに「いま2世帯の家族が見てくれてる」「そろそろ学校のクラス1つ分だぞ」「おいおい、もう体育館じゃないと入りきらないんじゃないか」みたいに考えて、モチベを保っていた。
数字の向こうに生身の人間がいるのだ、そんな当たり前のことが、スマホやパソコンの画面を通すとものすごくわかりづらくなる気がする。量は教えてくれるけど、質は教えてくれない。
これは自分で探らないといけなくて、プラットフォーム側はあんまり教えてくれない。
例えば、実際にコメントをもらったり、会ったりすると、その人の熱意を感じることができ、それが数字の”濃度”という理解にもつながったりするけど、いやいやもしかしたら、「めっちゃ面白い!」って思ってくれてるけど、忙しくて「いいね」しか押せてない人もいるかもしれない。
他にもSuper Chatみたいな投げ銭でのサポートもある。ただ、これもありがたいと感じつつ、結局は金銭という数値に変換されてしまい、その人のほんとうの熱意の伝達とはまた違うのではないか、とも思ったり。
なにがいいたいかというと、コンテンツ発信者が視聴者の”熱意”を想像するのは、すこぶるむずかしい、ということなんじゃないかなと思う。たぶん。
もしかしたら「僕はこのYoutuberが大好きだから、広告は絶対にスキップしないで見てあげるんだ」という人もいるのかもしれない。
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逆をいうと、熱意を持たない、いわば魂の入っていない発信は、相手に見透かされる気だってする。「いまこれがトレンドだから、こうしたら見られるんじゃないか」という下心でつくって、結果たくさん見られたとしても、じゃあ一体その数字の”濃度”はどうなっているんだろうか。
ここのところは、なかなーか想像がむずかしい。
いや、実際のところ、これを感じ取るための仕組みはいろいろとできているとは思うんだ。生配信(ライヴ)だったら、もっと熱意を感じやすいだろうし、閉じた場所としてのコミュニティでもそう。
それでも気づくと「数字」「すうじ」「スウジ」「SUJI」というわかりやすい看板に目がいってしまって、それが答えかのように振る舞ってしまう自分の脳があったりもする。「いやいや、違うだろ」と言い聞かせながらも、気づくと「数字」が目の前にある。
数字を追うことは全然わるいことではないけど、そのコンテンツに自分の魂は入っているんだろうか。そんな「気合いだ!」みたいなレベルである必要は全然ないんだけど、「これが私の一部です」と胸を張って言えるような、そんなコンテンツになっているだろうか。
魂がこもっていれば、自分にとってもやり続ける意味が生まれるし、うまくいかなかったとしてもやった意味だって生まれる。そして魂がこもっていれば、それを正面から受け取る人だってきっといつか現れる。
・・・
なんかちょいと重量感のある内容になってしまった。こんなことを思ったり、思わなかったり。
とりあえず、夕食の準備はじめます。
※サムネはBlenderにて適当に制作。タイトルは「キノビル」
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