ネガティブ・ケイパビリティ

最近いくつかの本を好奇心のままに読んでいく中で、ちょっとずつではあるが、浮かび上がってきているというか、自分なりにすくっている視点がある。それを一言で「ネガティブ・ケイパビリティ」とするのは、ちょっと乱暴な気もするけど、なんかそういう感じである。

ネガティブ・ケイパビリティというのは「答えの出ない状態に耐える力」と言われたりするみたいだけど、要はモヤモヤに耐える力である。将来、社会はどうなるのか、AIが進化してどうなっていくのか、創造性ってなんだ、よい人間関係とは、みたいな視点がいろいろとあるとして、そこには「わからないものをわからないままにしておくことがいいかもね」というニュアンスが感じられてきた。

もちろん、「わからない」を「わからない」まま放置するのを「耐える」としてはいないと思う。「わからない」から「わかろう」とする。でも、正解があることは期待しない。「わからない」を抱えながら「わかろう」とする姿勢が大事なんだろうなと感じている。

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ここでちょっと今まで読んだ本の内容をつなげてみるために、単語を羅列させてほしい。頭の中でそういうのはやれや、という話なのであるが、まぁ、このまま書いてみる。

ネガティブケイパビリティ、火星の人類学者、創造性、AI、ズレ、失敗、園芸家、誤配、人間関係、人間の外側

こんな感じだろうか。なにがどうつながるのか、ちょっとこれから書いてみるが、力尽きて200文字で終わるかもしれないし、もっと書くかもしれないし、このブログをおじゃんにして、そもそも公開しないかもしれない。

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人間関係の話でいうと、これは最近ローンチされた distance.media の記事がおもしろかった。ネット上で人間同士がよりよい関係性をつくっていくには「火星の人類学者」という視点がよいのではないか、という話があった。

SNS(特にツイッター)では「それは正解」「それは間違い」という極論になってしまいがちで、それが息苦しさにつながっていて、ぼく自身、年々、SNSで発信するというハードルが上がっていることを感じている。ツイートしては消す、というのをたまにやっていることもある。

別に批判が飛んでくるような内容でもないとは思うのだけど「もしかしたら、いつか忘れた頃に批判が…」と想像すると、その「万が一」がこわくて消すことがある。心配性だとも言えるけど、ネットにおいては心配性くらいがちょうど良いのではないか、と思っちゃうほどじわじわと息苦しさが増している。

そこで「あなたは火星からやってきた人類学者で、地球人のことを調べるためにやってきた」ということにしてみると、あら不思議、そもそも「わからない」ものに向かっているのだから、「それは違う」「これはこうだ」と知識マウントする必要性もなくなるし、ある意味でフラットに探索できるのではないか、みたいな視点である。

これは人間関係でもいえることだと思う。そもそもひとそれぞれ育った背景が違えば、価値観も違うのだから、「わかりあえる」ということ自体が幻想であるといえる。でも、それは「わかりあえなくていい」という意味ではない。「わかりあえないよね」という前提に立った上で「わかりあおう」とする。でも、「わかりあえる」ことは起こらない。これはネガティブケイパビリティだと思う。「わからない」というモヤモヤをずっと抱えることにもなるのだから。

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対象を「AI」にうつそう。ここで、創造性や園芸家という言葉をだしていきたい。「AIに仕事を奪われる」という議論はあるとは思うが、それはもちろん起こると思うし、それを「奪われる」と捉えるのではなくて「これはキミに任せた、わたしは新しい世界を探索するよ」と積極的に奪わせる視点が大事だろうと思うし、そもそもこれは歴史的には繰り返していることのようで、その対象が「AI」に変わっただけだ、ということみたい。

例えば、写真発明以前の画家は、現実を忠実に再現することでの写実性が作品の評価に直接つながっていた。これがカメラ・写真が発明されることで「現実を映し出すのはカメラのほうが質が高い」となり、この部分が自動化した。これを人間が何十倍の努力でやったってカメラには敵わないんだから、画家は新しいスタイルを求め、抽象派などを生み出した。みたいな話があった。

話を戻そう。それで「AIに創造性はあるのか」という話なのだけど、いや、当然あるのかどうかはぼくにはわからないし、それに対するはっきりした回答もまだないんだと思う。それでも「創造性とは」という話で考えていくと、そこでは「間違いを許容する」みたいな話がでてくる。

この前、ずいぶんと久しぶりに映画『インターステラー』を観たのだけど、アン・ハサウェイ演じるアメリアがぽろっと「進化の基本は変異」といっていた。変異とネガティブケイパビリティは、つながっているような気がする。誤配や誤読ともきっとつながっている。

今までにない新しい価値が生まれる、1が100になるのでもなく、最適化が進むのでもなく、そもそも今ままでの変数が仮にxだとするなら、そこに全く新しい価値基準の変数としてyが生まれる、そんなことが変異なのかなと勝手に解釈している。この変異を起こすためには創造性が必要で、変異は創造でもある、といえるかもしれない。

じゃあ、創造性を生み出すにはどうすればいいか、というと「自分が間違いを犯すことを許すこと」という話が『創るためのAI 機械と創造性のはてしない物語』という本ででてきた。さらに「どの間違いを残すか選ぶこと」がアートである、と。

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AIに創造性を期待するのであれば、間違いを許容してあげないといけない。どの間違いを許容するのか、というのは人間の判断になるが、AIを使うなかで「正しいか間違いか」みたいな視点だけしか持っていないと、既存のボックスの枠に収まり続けることになる。

さっき書いた写真発明の話でいう「これはAIのほうが有能だし効率いいから、やってもらったほうがいいじゃん」みたいなものは当然あるとして、そこからさらに先の「創造性」を見つめたとき、そこには「わからなさ」に対峙する力も必要な気がしてくる。未知なる世界に飛び込むためには「わからない」を見つめなくてはいけないし、ある物事が数値化されて「わかった」ことで、その外部が見えて、あえてずらすことも可能になる。「わかった」という幻想に出会い、「わからない」を発見する。

例えとしてわかりやすかったのは、「園芸家」という表現。理想の庭をつくるために、ひとはどの植物を植えるか、どこに植えるか、どの頻度で剪定をするか、とコントロールはするけども、その先の育った光景やどんな実がつくのか、というのは自然だからコントロールがきかない。コントロールできないものはしないほうがいいし、コントロールしようとしないほうがいい。ある意味での予測不可能性を包み込んでみる必要がある。これはネガティブ・ケイパビリティだと思う。

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「誤配」という言葉の意味は、もともとは「郵便物が誤った場所に届く」ということらしいけど、いま書いてきたような「わからなさ」に耐える姿勢は「誤配」を許容することでもある。

「自分はこういうつもりで言った」が予期せぬ場所に届いたり、予期せぬ読解をされたりすることがあるが、現状のネット空間はそれが「批判」として跳ね返ってくることが多い印象を受ける。「これが正解」「これは間違い」というそれぞれの正義が仮想的にぶつかりあっていたりする。

でもこういう「そういうつもりで言ったんじゃなかったんけどな」というのが許容されれば、それが創造性につながったり、変異したり、心地よい人間関係にもなっていくのだろうなと想像する。「わからない」という現象を水晶玉に入れて、それぞれが温かい目で見つめたり、触ったりするイメージだろうか。

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わりとごちゃごちゃとした内容になってしまったが、最近のインプットからすくえてきた共通点のようなものをごちゃっと書いてみた。まだまだ解像度は低いが、この「解像度は低い」というのも抱えつつ、「わからない」まま書いちゃうというのも、ネガティブ・ケイパビリティかもしれない。

言いかえれば「自然に対峙する」ともいえるかもしれない。自然が理解できることなんて到底ないわけだけど、一緒に地球上で暮らしている以上、理解しようとする姿勢は大事である。かといって、理解なんてできない。理解できっこないのに理解しようとする。そういうエンドレス対話があるという事実を認めることかもしれない。

ちょこちょこ「人間中心設計は限界である」という話もでてきたりして、そういう意味で、また好奇心が解剖学とか生物学に向いてきている。

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いつもよりちょっとがんばって書いてしまった。疲れた。

最後に、参考になったものを入れておく。

・『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』谷川 嘉浩
・『創るためのAI 機械と創造性のはてしない物語』 徳井直生
・『「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』細谷 功
・『哲学の誤配』東 浩紀
・『進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』太刀川英輔
・「弱いメディアを実験する」DISTANCE.media
・『インターステラー』クリストファー・ノーラン

※サムネはUnsplashより。縦画像だったのでトリミングした。

yoshikazu eri

当サイトの運営人。大阪生まれ千葉育ちの87年生まれ。好奇心旺盛の飽き性。昔は国語が苦手だったが『海辺のカフカ』を2日間で読破した日から読書好きに。気づいたら2時間散歩している。

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