プライベートアイランド

ネット上にプライベートアイランドなんて持つことは可能なのだろうか。自分だけの小島、である。

これは今でも惜しい出来事ではあるが、昔PathというクローズドのSNSがサービス終了してしまったことがあった。親しい人の範囲内だけで繋がって、なんでも気軽に投稿する。予期せぬ外野からのフィードバックというのもない。というか、外野がない。

今まで何度も「Pathよかったなぁ」と書いてきて、「またかい」という感じもするのであるが、これが要するに”プライベートアイランド”みたいなものである。

Path以降、いまのところ代替サービスは出てきていない。Bondeeは悪くないけど、長めのテキスト投稿をする設計ではないみたい。

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この話に、ぼくのVaporwave好きというものがからんでくる。2年ほど前に「シティポップに和む」という記事を書いていた。再読してみると、そこには「シティポップには、商品の消費サイクルがもっと遅かった時代がカプセル化されている」というような内容が書いてあった。

そうだそうだ、ぼくがVaporwave(ここにシティポップも重なる)を好きな理由の1つは、これだった。

色々なサービスがどんどんリリースされて、新しもの好きのぼくは好奇心を片手に色々試してみたりして、それはそれで楽しいし、今でいえばAI系のニュースとかね。

ただどこかで、ぼくの気づかないところで体が「ちょいと走り過ぎじゃあないのかね」と信号を発していたりするのかもしれない。気付けや、という感じなのだけど。「ネット上のプライベートアイランドがほしい」という欲求は、この信号の一部であると思う。

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ただ補足すると、ネット上に安全な場所は存在しないとは思っている。

本当に誰にも見せたくないのであれば、アナログで残しておくべきだと思う。実際、Pathを使っていたときだって、ある程度の線は引いていた。ここまでは書いていい、ここからは書かない、みたいな。

それでもツイッターやインスタなどの不特定多数に届くようなSNSに比べれば、ずいぶんとその”線”は心地のよい距離感をもたらしてくれていたと思う。

思わぬ人に届いて共感を得られる。それはインターネットの魅力でもあるのだけど、思わぬ人に届いてほしくないものもある。その意味で、プライベートアイランドを探しているのだけど、なかなかない。

そもそものハードルとして、そういうものを”サービス”単位で使用すること自体が、親しい人に「これ使ってみない?」という勧誘のようなプロセスを経てしまうハードルがある。人それぞれ、新しいサービスを試す心理的ハードルは違う。

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LINEのオープンチャットでグループ作って、親しい人同士だけで投稿しあう、それでいいじゃん、と思ったりもしたのだけど、いやいや、ここには意外と罠があるのだ。

LINEアプリ内では家族や友人、会社の人など、さまざまな人とやり取りする可能性があるのに、そこにぽつんと親しい人グループがあると、誤送信がこわい。親しい人グループに投稿したつもりが、上司に送っていたなんていう世紀末現象が起こりうる。

ということで、プライベート”アイランド”という以上、なにかしたら独立したサービスなりプラットフォームなりで実現したいところではあるがなぁ。

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最近はじめたこのブログも、プライベートアイランドにちょいと通じるところはある。

設計上、思わぬ人に届いてしまうとは思うが、多くの人に読んでもらうためにがんばって書いたり、タイトルやサムネに凝ったりしているわけではない。

ツイッターやインスタは即座にコメントという形で反応が届くが、このWordPress製のサイトでいうとコメント機能はもはや時代遅れ感があってあまり機能していないし、ツイッターでメンションされたり、エゴサーチとかしない限りは、その反応はそこまで可視化もされない。

もちろん、反応は嬉しくもあるのだけどね。ただ、あまりにも多くに届くと、キャパ20名のカフェに100名のお客さんが押し寄せ、当然キャパオーバーだからサービスの質が下がり、不満が続出するなんていう「こりゃうれしい悲鳴ではなく、単なる悲鳴になっちまうぞ」なんてことが起こるかもしれない。

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そんな感じで、「思わぬ人に届いて共感が得られるよね」「思わぬ人に届くのはあまり良くないよね」という両者の感情を抱えながら、インターネットと触れ合っている。まぁ、諸刃の剣でしょう。

そういうぼくの感情に癒しを与えてくれるのがVaporwaveだったりするのかもしれない。

※サムネはBlenderにて制作。タイトルは「避けられないもの」

yoshikazu eri

当サイトの運営人。大阪生まれ千葉育ちの87年生まれ。好奇心旺盛の飽き性。昔は国語が苦手だったが『海辺のカフカ』を2日間で読破した日から読書好きに。気づいたら2時間散歩している。

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