リラックスとねこまんま

また、蜂だ。朝の公園で、蜂がぼくの周りを低空飛行している。腹部が太いそのボディは、オレンジをぎらつかせている。これは避難案件だ。すでに開始してしまったゲームをスマホで操作しながら、ベンチから離れる。蜂が遠のき、ベンチに戻る。また蜂がやってくる。離れる。結局、3度繰り返した。

そういえば、公園から帰るとき、木の下で数滴ささいな雨がふることがあるのだが、これはセミがふらす化粧水ということでよろしいのだろうか。

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カフェで作業したり読書しているとき、周囲に視線がこぼれて、うまく集中できないときがある。激しい貧乏ゆすりをする学生がいたときがそうだった。

なんだ、いらいらしてるのか、落ち着かないのか、もやもやしてるのか、試験勉強が不安なのか。そんなことを思い浮かべながら、彼の左のヒザが上下にゆれるのを横目で感じとる。10分ほど集中力が乱されたが、その後は背景と同化したのか、気にならなくなった。

隣のイスに足を置いてリラックスしている男性客がいたこともあった。そのときは午前10時くらいで、店内はすいていた。ぼくを含めてお客さんは4組くらいだったろうと思う。こちらは集中力が乱されるというよりは、「え」という感じであった。驚いた。たぶん、ひとそれぞれ”自宅”の境界線が違うのだろう。彼はまるで自宅でくつろいでいるように、堂々とリラックスしていた。

もしくは、そこまでしてリラックスしないといけない理由があるのかもしれない。彼はプログラマーでそのときサイトのバグを修正していた。なんとか修正できたが、実は朝8時には修正しておかないといけないのに、結局10時頃になってしまった。その報告をしたあとの上司の返事を待っている。そりゃそわそわするだろう。イスに足をおいてリラックスしたい気持ちも理解できる。「いま混雑してないし。申し訳ないがやらせてくれ」と罪悪感を抱えていたかもしれない。

もしくは、現金6万円が入った財布を昨日落としてしまったのかもしれない。でもそれだったら不安で貧乏ゆすりをしそうなものだが、彼はあえて真逆のリラックス作戦をとっていたということになる。

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ご飯と味噌汁な夕食をスタートして、もう1週間は経ったと思う。最初はそれぞれ別の容器に入れていたが、面倒になって大きな器の半分に2合のご飯を入れ、残りに味噌汁を入れる方式になった。ねこまんま、である。味噌汁全部を飲むと塩分がやばそうなので(20%減塩ではあるが)、ちょっと残して、翌日の朝食にしている。

ご飯に味噌汁をかけるのは「行儀が悪い」とか、「朝ごはんに味噌汁をかける人は出世しないという迷信がある」という情報まででてきた。ぼくの場合は夕食だから問題ないという解釈はしちゃだめだろうか。まあでも確かに、白ごはんは白ごはんとして食べたい気持ちはある。味噌汁が混ざった白ごはんは、それはそれでおいしいのであるが、邪道感はある。ましてや「迷信」なんて言われたらぼくの脳みそは『遠野物語』を思い浮かべ、そのような生活習慣を正す妖怪っているのだろうか、と考える。

食事に関しては「効率重視です」と他者に伝えることもあるのだけど、もちろん「おいしい」が必須である。ただ、ぼくはだいたいの食べ物をおいしいと感じるので、効率化をしても、手間をはぶいても「おいしいな」と感じてしまう。効率化をしてもおいしさが犠牲にならないので、どんどん効率化が進む。ねこまんまも、その例である。どうせ全部食べるってわかってるんだから、いちいちおかわりするのが面倒くさい。洗い物も増えちゃうじゃないか。

ただ、最近『遠野物語』なり『古事記』なりを読んでいるのもあるのか、「よくわからないが、やっておくといいもの」ということをもうちょっと受け止められるようになるような気配がある。そこに理屈も説明もないが、とにかくそういうことだ、それをやるのだ、というような。もっといえば「日本の文化を知りたい」と思っているのだから、よい機会として、日本人らしく食事してみてもいいのではないか。一汁一菜、ときどき、ねこまんま。

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そういえば、町田康の『口訳 古事記』がめちゃくちゃおもしろい。400ページを超える分厚い本だが、文章は少なく、昨日カフェですいすいと200ページ読んでしまった。神々が「あかんやん」「マジすか」とか言うのである。何度も笑ってしまった。たしか古事記全編が入っているわけではないとどこかの記事で読んだのだけど、それでも入門書としてめっちゃええやんと思った。神様の名前はむずかしくて覚えられないが、起こっていることのスケールがバグっており、はちゃめちゃな読書体験のように感じる。

※サムネはUnsplashより

yoshikazu eri

当サイトの運営人。大阪生まれ千葉育ちの87年生まれ。好奇心旺盛の飽き性。昔は国語が苦手だったが『海辺のカフカ』を2日間で読破した日から読書好きに。気づいたら2時間散歩している。

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