もう1枚のしおり

ぬか漬けではズッキーニが一番好きなぼくは、『スター』を読み終わり、その余韻が抜けぬまま『爪と目』を読んだ。脳内がぐちゃぐちゃである。爪を噛む女の子が映画監督を目指しそうだし、古本屋はYoutuberと不倫しそうである。

『爪と目』は、ホラーということであった。読んでみたが、あんまりホラー感がない。それは小説筋肉がおとろえているぼくのせいなのか、それとも物語の複雑性からきているのか。何本か書評を読んで、再読の必要性を感じた。だが、あまり小説を読まなかったぼくでも、言葉で紡がれた物語のホラー性に気づいたときの戦慄性は、映画とは桁違いであることくらいはわかる。再読は、ちょっと様子をみよう。

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ぬか漬けではズッキーニが一番好きなぼくは、昨日丸善で文庫本を2冊買った。新潮文庫を買うとステンドグラスのしおりがもらえるということで、2枚もらった。これがなかなかかわいい。3枚あつまった。

書店に入るとその新潮文庫フェアが展開されていたのだが、ぼくはまずお目当ての本を奥の文庫コーナーで見つける。それを手に持って「あれも読みたいな」とレジ前のフェアに戻り、しおりを1枚手に取る。

「お客様、こちらも新潮文庫ですので、しおりをもう1枚差し上げます」

レジスタッフにそう言われて、ぼくは内心おどった。てっきり、レジ前のフェアに積まれている文庫本のみが対象だと思っていた。新潮文庫全体が対象ということらしい。

「あ、そうなんですね。」

ぼくは、スタッフにそう伝えた。ぼくの感動が伝わるだろうか。「まじか!?うれしいやん!」と叫んでいる心の声をおさえ、「あ」という間を用いて、とっさにぼくはうれしさを伝えた。

伝わっているわけがない。そのとき、ぼくは自分の感情表現レパートリーの少なさとあまりにも低い感情瞬発力に、少し落ち込んだ。この感動、ちゃんと伝えたほうがよかっただろうか。

「おー!そうなんですね!なんか得した気分です。」

そんなふうに素直に感情を表現できる人は、たくさんいるのだろう。うらやましく思う。ぼくができるのは「あ」という間を加えることだけである。「それが自分なんだ。これを許容して生きていくのだ」と名言のようなものを脳みそがはき出す。

おれは、どう生きるのか。新潮文庫のしおりをもう1枚もらえるとわかったとき、「あ」を加えるのだ。おれは、そう生きる。ぬか漬けではズッキーニが一番好きなぼくは、ちょっと力んでいる。

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やっと本題に入れる。昨日、24時間ほど漬けたズッキーニを食べた。びっくりするくらいおいしくて、個人的好きなぬか漬けランキングでキュウリをおさえ、1位におどりでた。

食感はキュウリに似ているが、ちょっと硬めで水分は少なめ。それで食べると、ちゃんとズッキーニの風味があるのだ。本来ズッキーニはぬか漬けで食べるべきものなんじゃないかと思うくらい、その強みを最大限に引き出せたような気持ちになった。

あくまで個人的な好みであるが、ズッキーニのぬか漬け、ぜひお試しあれ。

※サムネはUnsplashより

yoshikazu eri

当サイトの運営人。大阪生まれ千葉育ちの87年生まれ。好奇心旺盛の飽き性。昔は国語が苦手だったが『海辺のカフカ』を2日間で読破した日から読書好きに。気づいたら2時間散歩している。

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