ぼくは最近まで「みうらじゅん」という人物をあまり知らなかった。「あまり」というのは、知らずにこの人の活動や作品には触れていただろう、という意味である。「マイブーム」「ゆるキャラ」という言葉をつくった人のようで、すごい人のようである。
知人が時々「みうらじゅんが」と話題に出すので、とりあえず2冊は読んだ。もう1冊は積読中である。そして最近『「ない仕事」の作り方』という文庫本を買って読んだ。
まだ世間に認められていない、知られていないものを発信して収益を得ることは難しい。この本では、みうらじゅんが「これはすごい!」と発見しながらも、それをどうパッケージングして世間に流行らせてきたか、という数々の活動が紹介されている。
しかもその活動スタイルに、ある種のストイックさというか信念を感じた。本では「グッとくる」と表現されていたが、例えばグッときたものに出会っても、著者はそれを「寝かせておく」そうである。
まだ初期のグッときてる状態で、この説明しようのない面白さを、具体化する段階にはなっていないからです。
『「ない仕事」の作り方』文庫本の149ページより引用
著者は最近、お店の看板によくある「since」という表記にグッときているようで、カメラを持って片っ端から撮影して集めているそう。でもなぜグッとくるのか言語化できていないから「寝かせている」と言う。
ぼくがストイックだと感じるのは、「寝かせている」と言いながらも修行のように行動している点。「これやってなんの意味ある?」という疑問を押しのけ、「なにが面白いのか?」に対する決断を保留しつつ、無心になって探究する姿がストイックだ、すごいと思った。
ぼくにも「なんか好きなんだよなぁ」と感じるものはいくつもある。なぜかマンションに萌えるし、ドラマ『夢のカリフォルニア』は名作だと思うし、なぜか「文章」を書くことに固執するし。
これらについて今まで自分なりに分析っぽいことをしたことはある。ただ、みうらじゅんはこれを桁が違うレベルで実行し、しかも自己満足ではなく「世間にどう流行らせるか」という視点でマーケティングから発信からなんでもひとりでやっている。本のタイトル通り、数々の「ない仕事」をつくってきた。
この本を読んで、「すごい好きだけど世間では認められていないもの」を自分なりに発信していこうかな、と思った。例えば、ドラマ『夢のカリフォルニア』とか。このドラマ、面白いくらいにネット上に情報がない。
このドラマをまた観てみて、理解を深め、それについて淡々と発信、いや記録を残していくのは楽しそう。ぼくと同じように「名作なんだけどなぁ」とモヤっとしている人が他にもいるのではないか。そんな人たちと(もしかしたら)繋がることができるかもしれないし。
夢のカリフォルニア、略すると夢カリ?夢フォル?夢ニア?ふむ。
まぁとにかく、「これはなんかいいぞ!」と感じた自分の感性を信じる。一旦信じたら、その意義とか考えずに淡々と続けてみる。その先に、もしかしたら「そういうことか!」という言語化が待っているかもしれない。この本を読んで、そんなことを感じた。「ない」ものを「ある」にすることは、修行なんだなぁって。
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